アメリカのデパートの仕入れシステム

日本でも企業の社会的貢献(CSR)が重視されるようになりつつあるが、アメリカにおいては、この企業の社会的貢献が、デパートの仕入れシステムにも取り入れられている。
アメリカの代表的な大手デパートMacy's, Nordstrom, Bloomingdaleなどは、仕入先を検討する上で一番重要な点として仕入先の行っているCSR活動とあげており、どれだけメーカーや卸業者が社会貢献活動をしているかが大きな評価点となっている。CSRといえば日本では、貧しい国への寄付や、環境問題への取り組みなどが考えられているが、これらのデパートは、職場環境・従業員に対する賃金制度・福利厚生を含む詳細まで第三者を使って抜き打ち調査するほど重視している。

多くの商品がアジア諸国から輸入されている。最低賃金以下の低賃金で働かせていないか、チャイルドレーバーは使用していないか、工場には従業員あたりの相当数のトイレがあるか。工場内の空気は安全化など、チェックポイントは50ページ近いマニュアルにまとめられている。

また、環境破壊を引き起こすような材料を使用してないかも重要点である。何年か前ヨーロッパのメーカーIKEAが、森林伐採が禁止されている地域の木を使用しているメーカーからの家具を購入して販売したとして、ヨーロッパでボイコット運動がおき売上げが25%以上も下がった年があった。このようにデパートや量販店においては、消費者のよるボイコットなどにより大問題になりかねない。そのため、職場環境同様、資材の抜き打ち検査も頻繁に行われているとのことである。
また、デパートのCSRの一貫として中小企業支援活動というものもある。ほとんどのデパートや量販店において、DIVERSITY PROGRAM(人種は社会経済的な多様性プログラム)というものを持っており、全仕入れの30%はマイノリティ企業から仕入れると社内取り決めがある企業も多い。マイノリティとは、白人以外の人種のオーナーが51%以上の株を持っている企業または女性が51%以上の株を持っている企業のこと。The National Minority Supplier Development Council やThe Women’s Business Enterprise National Councilなどの団体でマイノリティ企業として認定されると、デパートに特別枠でのアプローチする事もできる。
今後も、更にこれらが重視されるようになるであろうと思われる。企業にとって、IRレポートが一番大切だった時代から、CSRレポートが重視される時代になってきた。アメリカのCSRの動きは非常に面白い。もちろん、社会的貢献は利益やマーケティングのためではないが、CSR活動は今では大きく企業のブランディング・マーケティングに関わっているように思う。
今後は、マーケティング戦略の中のCSR活動を紹介していきたいと思う。

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