ワールド・オブ・コンクリート2014(World of Concrete 2014)レポート


コンクリート業界の世界最大の展示会「ワールド・オブ・コンクリート(WOC)」が
1月21日−24日、ラスベガス・コンベンションセンターで開催された。世界各国の建築メーカー、資材メーカー、機材メーカー、販売店など1,800近い企業や団体が出展。

WOCはコンクリートや石材を用いた建築資材、装飾材、建築機材など建設業界の最新情報を得るための貴重な国際見本市。世界中から注目を集める年1回のコンクリート業界のビッグイベントとして、日本からの来場者も年々増えている。Kubotaなどの日本ブースも存在感をアピールしていた。
現在、WOCは業界唯一・最大のビジネスチャンスを秘めたコンクリートの総合展示会へと成長、来年は40周年を向かえる。

 会場は中央・南・北の各ホール、屋外スペースがフルに使われた。屋外ではダイナミックで派手なデモンストレーションが所狭しと実施された。一体が一大工事現場と化した迫力ある展示・デモ会場の様相を呈していた。南ホールでは、主にコンクリート修理・解体、コンクリート表面・装飾。中央ホールでは原材料・資材分野。北ホールでは石やレンガ細工、石造建築を扱っていた。野外スペースはコンクリート表面加工
や装飾コンクリートが中心の展示とデモがあり、終始、来場者を飽きさせることがなく、コンクリート業界のテーマパークといっても過言ではなかった。

会場のサイトマップは下記よりダウンロードできる。全体を見るのに最低二日はかかる。


さて、会場をのぞいてみよう。ミキサー車、コンクリートポンプ車、その他作業車が泰然と並ぶ。壮大で迫力がある。今更ながら、日本の国土面積の25倍を誇るアメリカ、その大きさやスケール感がやはり作業車のサイズをみていても十分以上に伝わってくる。作業車に施した色やデザイン、これもどちらかと言えば「地味」な日本のコンクリート業界から見れば、派手で迫力満点だ。あるいは一種のアート作品をみるような気分になってしまう。見方を変えれば、日々の仕事を楽しみたい、マイツールとしてより自分の仕事を極めたいという「働く人々の誇り」として作業車の存在があるように映る。問題はこういった作業車や機械類を日本に導入する場合、日本の道路基準や工事基準に合うサイズかどうかを含め、該当する機器や作業車の細かいスペックの事前の検証が必要となる。





冒頭にも触れた通り、日本からも多くの来場者があった。2020年には東京オリンピックを控え、周辺では関連工事が今後増える。1964年に東京オリンピックを経験した際、首都圏を中心に首都高速や幹線道路、新幹線、ホテル・関連周辺施設など大々的にインフラ整備と建設工事が行われた。それから50年、半世紀を経た今、首都圏を中心に各地域で建造・建築物の老朽化が指摘されている。コンクリート業界における新たな部材や材料、環境や省エネ、作業効率を考慮した機器・機械類や各種作業車の新機種のニーズは極めて高く、WOC にその答えを見つけようとする業界関係者は今後一層増えるものと思われる。

その中で、日本からの来場者の皆さんの興味にとまったものを二例ほど紹介したい。皆さんの興味・関心の対象はいくつもあったが、たまたま、間近で立ち会ったものをお伝えしたい。一つ目はConcrete Placerと呼ばれるコンクリートを安全な所から無線操縦で打設する2台からなるユニット。日本ではコンクリートを打設する担当とコンクリートをならす担当がペアになって手作業でやるケースが一般的なようである。夏の炎天下での長時間に渡る仕事は非常にきつく、作業効率も落ちてしまう。12馬力のガソリンエンジン搭載、重量1000ポンド(454キロ)で前後・左右・斜めと360度の動きができ非常に俊敏である。
数年前からConcrete Placerはあったが、かなり改善され使い勝手も良くなったとの来場者の評価であった。



次に、コンクリートポンプ車のパイプカバー。
これは注意していないとブースの前を通り過ぎてしまう製品であったが、日本にはない製品で、パイプの破損や連結・結合部分のトラブルなどの際に使用するコンクリート漏れの防止ネットである。




会場内では展示以外に、販売コーナーも充実していた。ミキサー車やポンプ車などの精巧なミニチュアも販売され、来場者の中には「極上のオモチャ」に出会った子供のように目を輝かす人たちが多かった。日本では通常企業秘密となるコンクリート関連工事に関する具体的な数値を含めた詳細な事例報告が一冊の本として出版・販売もされていた。日本ではここまで詳細な内実を暴露(?)することはないと、ある日本人来場者はコメントされていた。恐らく、こういった技術も1年後2年後には次の新たな技術に取ってかわるのであろう。

コンクリート業界に係わらず、アメリカの良きビジネスの伝統の一つに業界同士が情報を共有し交流を深め相互に高め合って成長しようとする風土がある。日本では競合他社との情報共有等は考えにくいが、業界全体が成長することで自社の成長も期待できるというある意味アメリカらしい懐の深い、戦略的な考えが根底にあるのかもしれない。「自分たち一社だけではない、業界全体で成長をはかること」、こういった考え方も今後日本にとって必要かもしれない。

後日、ご一緒した日本の方から嬉しい便りをいただいた。
「・・今回のWOCを視察させて戴き、米国のコンクリート業界に於ける斬新な新技術を何とか日本の業界に持ち込みたいと強い思いを抱きました。・・」

WOCはコンクリート業界のテーマパークであり、ビジネスチャンスの宝庫、それを垣間みそう確信した今回の視察であった。









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